2009 Fiscal Year Annual Research Report
古典・量子相関をもつ系での微分幾何に基づいたベイズ予測理論の研究
Project/Area Number |
20700250
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 冬彦 The University of Tokyo, 大学院・情報理工学系研究科, 客員研究員 (90456161)
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Keywords | ベイズ予測 / 情報幾何 / 時系列解析 / 量子推定 / 事前分布 |
Research Abstract |
H21年度の研究も大きく分けて時系列解析および量子系でのベイズ予測の問題について取り組んだ。 1.AR過程の優調和事前分布に基づいたベイズ予測の手法については当初は多変量時系列のケースについて調べる予定だったが、解析的に計算しようとすると非常に煩雑になりアイディアは素朴でも技術的に難しいことが判明した。昨年度の結果から偏自己相関係数を座標系(PAC座標系)にとりなおすことで、幾何学的な量が見通し良く計算できることが示されており、本年度はPAC座標系を用いてさらに研究をすすめた。2次のAR過程(AR(2)過程)については、優調和事前分布を求めるための微分不等式が平易な形になるため、すでに見つかっているものよりも広いクラスの優調和事前分布が見つかった。また、3次以上のAR過程でもPAC座標系を用いることで、同様に計算しやすくなることが予想され、今後はこの方向で調べて行く予定である。多変量時系列、ベクトル型AR過程を取り扱う際にもこのようにうまい座標系、計算手法を見つける必要がある。なお、ARMA過程は低い次数の場合に試行錯誤的に探している状態だが優調和事前分布が見つかっていない。また、最尤推定量によるPlug-inタイプの予測密度はバイアス補正をしない場合にはさほど性能が良くないことが知られている。本研究で3次のAR過程でスペクトル密度の推定の数値実験を行って、Plug-inタイプに比べて、ジェフリーズ事前分布や優調和事前分布に基づくベイズスペクトル密度の方が性能が優れていることが確認できた。 2.量子系のベイズ予測の問題については無情報事前分布を構成する方法を中心に調べた。ある種の対称性をもつ有限個の純粋状態からなる統計モデルの場合であれば無情報事前分布は一様分布になることが示された。これらは、非直交なベクトル状態を含むので通常の古典的なベイズ統計学では出てこないケースである。また、量子系特有の現象として、このような無情報事前分布は一意には定まらず無数に出てくることも判明した。したがって数値最適化で求めようとしても解が収束しない。望ましい事前分布をどのように設定するか、数値的に求める際に解が一意に定まるなどもして引き続き調べていく。
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