2010 Fiscal Year Annual Research Report
古典・量子相関をもつ系での微分幾何に基づいたベイズ予測理論の研究
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20700250
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 冬彦 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 客員研究員 (90456161)
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Keywords | 時系列解析 / ベイズ予測 / 情報幾何 / 量子情報 / 事前分布 |
Research Abstract |
本研究では発生するデータが独立性の成り立たない統計モデルにしたがう場合について、よりよい予測分布を与える方法についてベイズ法および微分幾何学的性質に注目して取り組んでいる。本年度の具体的な研究項目は大きく以下の二つに分かれる。 1.時系列モデル AR過程のスペクトル密度のベイズ予測について、当初は数値実験を中心として事前分布の比較を行う予定だったが、要求水準が高いため数値実験を手伝ってもらう学生がなかなか見つからなかった。そのため水準を下げて、かなり簡単なレベルから手伝ってもらっている。そのため、まだ、十分に数値実験はできておらず、23年度に持ち越している。そこで、解析的に計算できるところおよび文献調査を中心に研究を進めた。最尤推定量のplug-inスペクトル密度に関しては、Hartiganによる最尤推定型事前分布を発見した。その結果を利用することで点推定量に基くplug-inスペクトル密度のクラスの中で許容的かどうかが、微分幾何学的な言葉で記述されることが示された。AR過程、MA過程では許容的であり、一般のARMA過程では非許容的であることが微分幾何学的な量の計算によって示された。 2.量子統計モデル 量子系のベイズ予測の問題については無情報事前分布を構成する方法を中心に調べた。Nature(Alice)が有限個の波動関数の組からひとつを選んで送信し、Player(Bob)は単純な装置で検出するというゲームを考えることにより無情報事前分布が構成できることを示した。これらの波動関数の組が対称性をもたなくても離散有限個であれば事前分布を構成できる。通常の量子系における無情報事前分布は、確率密度関数を密度作用素(行列)に置き換えた形式的な拡張に基いて考察されており、背後にある思想は古典確率論と同様である。一方で私の提案したものは古典的対応物をもたない純粋に量子論的な無情報事前分布の構成方法である。また、上のゲームの枠組みは実際に量子光学系で簡単に実現できる。さらに、素粒子実験における検出装置の原理的な性能限界を考える上でも、上の方法が応用できることが期待される。
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