2008 Fiscal Year Annual Research Report
特異モデルに対するモデル選択法の構築およびその応用
Project/Area Number |
20700252
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
二宮 嘉行 Kyushu University, 大学院・数理学研究院, 准教授 (50343330)
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Keywords | 因子分析モデル / 計量心理学 / 局所錐母数化 / 情報量規準 / 漸近分布論 / 特異モデル / モデル撰択 / 尤度比検定 |
Research Abstract |
本年度の主結果は, 特異モデルの一つである因子分析モデルに対する新しいモデル選択法を構築したことである. 因子分析モデルは, 計量心理学の分野で用いられる基本的なモデルである. そしてそのモデルを用いて情報を引き出すためには, 因子数を推定することは不可欠な作業といえる. m因子のモデルと(m+1)因子のモデルを尤度比検定で比べることを繰り返すことによって因子数を推定する, という方法は最も自然な方法の一つであるが, 因子分析モデルには特異モデルであるが故の非正則性があるため, 実行は通常のモデルのように容易ではない. 具体的に述べると, 尤度比検定統計量の漸近帰無分布が通常のようにカイニ乗分布にはならない. またこのようなケースにおいては, AICやBICといった情報量規準を形式的に用いることも有効ではない. そこで, 他の特異モデルにおいて非正則性を扱うために開発された局所錐母数化の概念を因子分析モデルに対しても適用し, 尤度比検定の漸近的な特徴付けを与えることをおこなった. そして因子分析モデルにおける尤度比検定統計量は, 他の特異モデルのそれに比べるとシンプルなものに収束することを示した. この結果を利用すると, AICを元来の定義に基づいて再評価することも可能となる. これに基づき, 因子分析モデルのための新しいAICを導出した. そして, 従来の形式的なAICや統計ソフトなどで実装されているConsistent AICに比べ, 新しいAICは妥当な因子数の推定を与えることを, より具体的には真のモデルにKullback-Leibler距離の意味で近いモデルを与えることを, 数値実験で示した. さらに, ある実データに対し, 新しいAICは最もふさわしいと言われる因子数を推定することを示した. このことは他の二つのAICが異なる因子数を推定することを, つまり新しい方法が小さな改良を与えるわけではないこと意味している.
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