2009 Fiscal Year Annual Research Report
特異モデルに対するモデル選択法の構築およびその応用
Project/Area Number |
20700252
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
二宮 嘉行 Kyushu University, 大学院・数理学研究院, 准教授 (50343330)
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Keywords | 疫学統計 / 集積性検出 / 信号検出 / 漸近分布論 / 多重検定 / 特異モデル / 微分幾何 / 尤度比検定 |
Research Abstract |
本年度の主結果は,疫学統計における重要な問題である集積性検出のための検定問題,例えばある病気の発生率が異常に高い地域を検出するといった検定問題に対し,そのP値の解析的な評価を与えたことである.この問題は,より一般には空間統計学におけるホットスポット検出問題と呼ばれ,ノイズの中に埋もれた信号を検出するといった信号処理・画像解析の問題なども含んでいる.この問題では,通常ホットスポット(地域,信号)の位置は未知であるため検定を位置ごとにおこなわなければならず,それは各検定間の相関が高い多重検定問題に帰着する.つまりP値の評価は困難なものになっているわけだが,信号検出ではホットスポット(信号)の形状はわかっていることが多く,Taylor et al. (2007 Biometrika)やNinomiya and Fujisawa (2007 Biometrics)などの手法を適用させ,P値のタイトな上界を評価することができる.しかし,集積性検出ではホットスポット(地域)の形状がわかっていないことが通常であり,それゆえP値の解析的な評価はより困難なものとなり,これまでP値は数値的に評価されるにすぎなかった.その中で,Taylor氏と私の方法を組み合わせることが上記問題に有益ではないかというアイディアのもと,実際にTaylor氏と共同研究をおこなった.そして,両方法の組み合わせを基に手法を発展させ,集積性検出に対するP値の上界を評価し,それが他のナイーブな方法と比べてはるかにタイトであることを数値実験により示した.また,開発した方法の漸近的な挙動を調べることにより,理論的にもタイトであることを示した.この結果により,P値の数値的な評価が困難となるような規模の大きな集積性検定に対し,P値を即座に評価することが可能となった.
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