Research Abstract |
本年度は,昨年度から引き続き,代数学の手法を用いて,漸近的有効性が保証されている上に計算量の少ない推定量を構成する手法について研究,提案した.この手法は,今日発展がめざましく応用が期待されるグレブナー基底やホモトピー勾配法などの計算機代数学を用いた推定理論として,これまで例がなく,新しい統計学の方向性として期待されるものである.本研究成果について,国際学会(WOGAS 3)や国内学会(IBIS-ML)の招待講演として発表した. また,これとは別にベイズ事前分布を評価する手法としてしられるDeRobertis分離度を用いた手法の理論的評価を行った.DeRobertis分離度を用いた手法は,分配関数の計算を必要としないため,例えばKLダイバージェンスや全変動距離を用いた手法と比べて,より広いクラスのモデルに対して有効である.しかしこれまでの研究では,その理論的評価は緩い上界を用いたものであり妥当性に疑問があった.そこで,DeRobertis分離度を用いた全変動距離の最適な上界を構成することによりこの問題を解決した.また,局所的な分布の情報を用いて,事前分布の評価精度をより高めることで知られる局所DeRobertis分離度についても,既存の全変動距離の上界を本質的に改善する上界を構成した.以上の成果はベイズ予測やモデル選択においてロバストな事前分布を構成する上で重要であり,論文誌で発表された. さらに,英語母語話者と日本人話者の単語心内辞書の違いを比較,検定する手法についても,あらたに単体的扇状の幾何学を用いた評価手法を提案した.これは,心内辞書のみならず,デンドログラムをはじめ木構造を持つ一般のデータの解析手法として新しいものであり,今後の応用が期待される.
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