2008 Fiscal Year Annual Research Report
偏りのあるサンプリング下における新しい統計的方法の開発とその医学研究への応用
Project/Area Number |
20700261
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
逸見 昌之 The Institute of Statistical Mathematics, 数理・推論研究系, 助教 (80465921)
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Keywords | 医学統計学 / 欠測データ解析 / 因果推論 / 最適化問題 / 統計数学 |
Research Abstract |
本年度はます手始めとして、本研究の動機つけの1つとなっている先行研究(メタアナリシスにおける公表バイアス問題に対する最悪評価アプローチ)の結果を、誤差が正規分布に従う線型回帰モデルにおける欠測データ問題という最も基本的な設定において、どこまで(直接的に)拡張できるかを考察した。その結果、従属変数に対するデータのみが欠測を起こすという状況において、データの欠測の仕方に対して何も仮定を置かずに、回帰係数の推定量のバイアスに対する最悪評価(不等式)を導いた。これは、最も単純な設定ながら、1つの基本的な結果を与えるものと考えられる。しかし、応用上、より有用と思われる信頼区間やP-値に対する最悪評価については、まだ得られておらず、今後の課題の1つである。また、研究実施計画書にも書いたように、応用上有用な方法論を構築するためには、最悪評価を導く際に、データの生成過程(取得過程)に対して何らかの合理的な仮定を置くことが望ましい。それは、実際の(具体的な)問題ごとに考えられるものであるが、どのような仮定を置いたらよいかを探索するために、医学系あるいは社会科学系論文を中心に文献調査を行い、さらに、統計数理研究所リスク解析戦略研究センターで構築中の医薬品関係のデータベースの検討を行った。問題ごとの個々の知見は少しずつ蓄積されつつあるが、(最悪評価に基く)具体的な方法論に結びつくまでにはまだ不十分であるので、できるだけ汎用的な方法論を目指す意味でも、今後も地調査を続けていく予定である。本度は他に、統計連学会連合大会と台湾の統計科研究所で開かれたワークショップで、メタアナリシスにおける公表バイアスの問題について講演し、国内外の研究者と、その延長線上にある本研究プロジェクトの内容について議論した。また、英国のJohn Copas教授を訪問して、本研究の方向性について議論した。
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