2010 Fiscal Year Annual Research Report
偏りのあるサンプリング下における新しい統計的方法の開発とその医学研究への応用
Project/Area Number |
20700261
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
逸見 昌之 統計数理研究所, 数理・推論研究系, 助教 (80465921)
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Keywords | 医学統計学 / 欠測データ解析 / 因果推論 / 最適化問題 / 統計数学 |
Research Abstract |
本年度も昨年度に引き続き、偏りのあるサンプリングが現れる様々な具体的状況の検討と、方法論構築のための理論的考察を行ったが、本年度は最終年度ということで、「最悪評価によるアプローチ」という特定の方法だけにこだわらず、もう少し広い立場からの研究も積極的に行った。その1つは、Warwick大学のJohn Copas教授と行ってきたメタアナリシスに関する研究であるが、公表バイアスの影響を受けにくい信頼区間の構成法についての論文が、医学統計学の主要雑誌のである、Statistics in Medicine誌に受理された。この方法では、メタアナリシスを行うため個々の研究結果の選択過程に対して、特定の仮定を置かずに済むので、本研究の方向性に合致しており、また、応用の現場ではしばしばそのような特定の仮定を置くのは困難なので、需要は大きいと思われる。(実際、出版直後にいくつか海外から問い合わせがあり、また、早くも応用系の別の論文に引用された。)一方、因果推論における交絡の問題も、偏りのあるサンプリングが行われる典型的な問題であるが、統計数理研究所リスク解析戦略研究センターにある臨床試験のデータベースを用いて、降圧剤試験における単剤・併用療法と薬剤の種類との因果的交互作用を評価するための新たな方法を提案し、論文にまとめた。臨床試験のデータを事後的に用いてリスク評価を行う新たな可能性の1つとして、本論文もStatistics in Medicine誌から高く評価されている。(この内容については、英国と韓国で研究発表も行った。)さらに、生存時間解析においてもしばしば「打ち切り」という形で偏ったサンプリングが行われるが、この分野の専門家と協力しながら、通常よく用いられているCox回帰モデルの仮定が間違っていても、意味のある結果が得られる方法を提案した。この内容も論文にまとめ、現在投稿中である。またブラジルの国際会議IBC2010では、「最悪評価によるアプローチ」についてこれまで得られた知見をまとめて、発表を行った。
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