2008 Fiscal Year Annual Research Report
疾病の集積地を精確に同定するためのスキャン統計量の開発と評価
Project/Area Number |
20700262
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Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
高橋 邦彦 National Institute of Public Health, 技術評価部, 研究員 (50323259)
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Keywords | 空間統計学 / 空間疫学 / スキャン統計量 / 疾病集積性 / 統計的検定 / 疾病地図 |
Research Abstract |
空間疫学において、ある疾病や症状の発生が集中(集積)しているかどうかを検出し、集積が認められる場合その集積地域を同定するために疾病集積性の検定法という検定方法が用いられる。特に集積が認められる疾病は感染症であったり、また、その地域に何らかの原因がある可能性が考えられたり、同定された集積地域(クラスター)に対して更なる調査の必要性が示唆されることになる。そこで集積性の検出力が高く、さらにその地域を精確に同定することができる統計手法が求められている。集積性の検定としてはKulldorff (1997)のcircular scan statisticが広く用いられているが,近年、それを改良したTango and Takahashi (2005)のflexible scan statisticも利用されるようになってきている。しかし両手法とも同じ尤度比統計量を用いた検定法であり、この統計量を最大化するという手法では真よりも大きなクラスターを同定してしまうことが指摘されている。本研究ではこの最大尤度比統計量によるクラスター同定の様子・性質を理論的、数値的に検討し、その上でより精度良く地域を同定できる検定統計量の提案をめざし,実データの解析など関連の研究も含め検討することを目的としている。 本年度は特に従来の統計量の性質の検討ならびにその適用について検討するため、国内外のデータ(症候サーベイランスデータ、ヤコブ病のデータ)への適用を通じ、circular scan statisticとflexible scan statisticの比較、同定の様子の観察を行い、それぞれの特徴を把握するとともに、疫学研究での利用が出来た。さらに疾病地図をはじめ疫学研究における集積性の検定の利用を視野に入れ、生物統計学の理論・実際的検討を行い、次年度への準備を進めることができた。
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