2009 Fiscal Year Annual Research Report
動的パターンの遍歴による単細胞生物の脳機能発現メカニズム
Project/Area Number |
20700275
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高木 清二 Hokkaido University, 電子科学研究所, 助教 (80372259)
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Keywords | 真正粘菌 / 収縮弛緩運動 / 回転ラセン波 / 位相応答曲線 / 複屈折繊維 / 細胞運動 |
Research Abstract |
本研究の目的は、粘菌を非平衡開放系で時間発展するシステムとしてとらえ、その高度な情報処理能力とその原理を調べ、生命現象を包括的に理解することであり、本年度は刺激に対する細胞の振動パターンの変化と細胞骨格の動態に焦点を当てた。 1.収縮弛緩運動の位相応答曲線 真正粘菌の振動パターンの光に対する応答メカニズムを明らかにするため、刺激のタイミングと振動の位相の変化の関係(位相応答曲線)を調べた。回転ラセン波が発生している場合、一つの系に全ての位相が分布しているので、全体を刺激することで刺激前後の位相変化の対応を調べることができる。その結果、最大収縮時期の手前で位相応答が遅延から先進に変わることが分かった。この結果は局所刺激による回転ラセン波の消滅の機構が、いわゆるtype0の位相リセットであることを裏付ける。粘菌の刺激応答のダイナミクの一部が明らかと成った。 2.アクチンの構造ダイナミクス 全方位偏光顕微鏡によりアクチン線維をライブイメージとして可視化し、移動に伴う繊維の動態を長時間(~8時間)観察した。一様環境下で粘菌(大きさは数百μm)の形態はオタマジャクシ様の比較的規則的な形とより不規則な形の間で変化を繰り返す。オタマジャクシ様の形態の場合、細胞の後部(尻尾のような部分)には進行方向にたいして垂直に明確な繊維構造ができ、その繊維は収縮弛緩運動と同期して生成消滅を繰り返す。これにより、原形質を前方に輸送していると考えられる。一方、不規則な形状で移動する際には太く明確な線維構造が先端から中央付近に多数現れ、その構造変化は収縮弛緩運動とは連動しておらず、それとは別の機能を果たしていると考えられる。これらの結果により粘菌の運動様式には少なくとも二種類あることがわかり、それに対応して細胞骨格の形態が大きく変化していることが明らかになった。
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