2010 Fiscal Year Annual Research Report
動的パターンの遍歴による単細胞生物の脳機能発現メカニズム
Project/Area Number |
20700275
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高木 清二 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (80372259)
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Keywords | 真正粘菌 / 細胞行動 / 数理モデル / 収縮弛緩運動 / 自己組織化 / 原形質流動 |
Research Abstract |
葛藤する状況において粘菌の示す逡巡行動の解明 真正粘菌の変形体を細長いレーン状の寒天の途中に忌避物質を置いた系に粘菌を這わせると粘菌は忌避物質に出くわす。すると、粘菌は忌避物質上で移動を止め数時間留まり(個体により時間は異なる)その後移動を再開するが、その際、忌避物質濃度に応じて3通りの行動を示す。忌避物質の濃度が低い場合には粘菌は忌避領域を通り抜け、濃度が高い場合は忌避領域を通り抜けずにもと来た道を引き返してゆく。これらの中間の濃度では、忌避領域を通り抜ける部分と引き返す部分に分裂する個体が現れ、この条件ではこれら3種類の行動のうち、どれが出現するかは個体によって異なる。 モデル構築にあたって変形体の移動メカニズムを探るため粘菌の移動運動中に収縮弛緩する部分(粘菌の後方部分)を切断し、粘菌先端部の運動の変化を確かめたところ、先端部は切断後しばらく切断前とほぼ同じ速度で伸展を続けることが観察された。この結果から、収縮弛緩運動が先端部の伸展運動に直接寄与しているのではなく、間接的に影響していると予想することができる。この結果をふまえて収縮弛緩運動による原形質(ゾル)の輸送と先端におけるゾル-ゲル変換にともなう自己触媒的な偽足形成反応を相互作用させた数理モデルを構築した.これにより粘菌のしめす長時間忌避領域でとどまる、いわば逡巡のような振舞いとその後に現れる行動を再現することに成功した.その結果,進行端における不応状態と活性状態の間を遷移するオンオフ的な生化学反応が粘菌の逡巡行動において重要な役割を担っていることが分った.
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