2009 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエ嗅覚学習系を用いた記憶形成を支える神経ネットワークの解明
Project/Area Number |
20700283
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村上 智史 The University of Tokyo, 分子細胞生物学研究所, 助教 (10463902)
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Keywords | 嗅覚記憶 / ショウジョウバエ / 条件付け自動化 / アルコールセンサー / 神経回路 / 記憶の固定 / キノコ体接続神経 |
Research Abstract |
1、 ショウジョウバエ嗅覚条件付けの半自動化 Murakami et al. J Neurosci Methods, 2010 in press (1) 機器制御ソフトウェアLabviewにより、従来手作業で行われていた刺激提示を自動で行う装置を製作した。0.1秒単位での刺激提示制御が可能となり、正確で再現性の高いデータが得られるようになった。 (2) 半導体アルコールセンサーを付加することにより、匂い学習の詳細な研究や最適化が可能となった。 (3) この装置では複数(現在9つまで)のサンプルを同時に条件付けすることができるため、記憶変異体のスクリーニング効率が飛躍的に向上した。 2、 匂い記憶維持に働く新たな神経回路の特定 ショウジョウバエ嗅覚記憶形成の中心となる神経構造であるキノコ体と接続する神経細胞の同定・解析を行い、脳頭頂に存在する一対の神経細胞(PMO neuronと命名)が中期嗅覚記憶の形成に必須であることを見いだした(学会で発表)。さらに詳細な解析からこの神経細胞は記憶の獲得期・読み出し期には不要であり、嗅覚記憶が固定される時期(consolidation phase)に働くことを明らかにした。キノコ体出力神経(MB output neurons)についてはこれまで機能面からの研究報告がないため、キノコ体を中心とした嗅覚記憶神経回路の全貌解明に向けて本発見は重要な端緒となると考えている。またヒトやマウスなどほ乳類においては獲得された記憶が時間の経過とともに初期脳領域から別の領域へ移動することが報告されており、本研究で同定したPMO neuronはこの現象を回路レベルで研究する上での有用なモデルになると期待される。
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