2009 Fiscal Year Annual Research Report
視覚誘導性眼球運動における運動の促進と抑制のメカニズムに関する研究
Project/Area Number |
20700286
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三浦 健一郎 Kyoto University, 医学研究科, 助教 (20362535)
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Keywords | 注視 / 視運動性反応 / 抑制 / 運動制御 / 視覚 / 眼球運動 |
Research Abstract |
本研究は、静止注視点の存在が視覚誘導性眼球運動の発現に及ぼす影響を詳しく調べることで、注視行動を実現する時に働く脳の運動抑制機構(注視システム)を理解することを目的としている。以下に当該年度の主要な成果を示す。(1)広い視野を覆う視覚刺激を動かすことによって反射的に誘発される眼球運動反応(追従眼球運動)を詳細に調べ、その反応の大きさが、静止した対象を注視している時と動く対象を追跡している時とでは異なり、静止した対象を注視している時には非常に小さくなることが明らかとなった。さらに、この行動に基づく反応の変化が、この眼球運動を司る神経経路の出力に近い部分で起ることを強く示唆する所見を得た。この結果はJ Neurophysiolに掲載された。(2)静止した対象を注視している場合でも、同時に呈示される動く対象に注意を向けている時(心の眼で追跡する時)には、注視行動に基づく運動抑制の効果が低くなることがわかった。実際に行っている行動だけでなく、被験者の注意の移動等の内的な要因の関与も示唆される。この結果は国際生理学会大会で発表した。(3)静止注視点の消失と運動開始のタイミングを様々に変えて、静止注視点の消失が種々の眼球運動(追従眼球運動反応、サッケード運動、円滑追跡眼球運動)の発現に及ぼす効果を調べ、その効果が全ての眼球運動反応で非常に似ていることがわかった。本研究の結果から、脳の運動抑制機構には視覚要因、行動要因および被験者の注意等の内的要因(心的要因)が関与することがわかり、また同じ機構が全ての眼球運動に作用している可能性を示した。本研究で研究対象としている、時々刻々変化する状況の中で運動を合目的的に調節する機能は、脳の柔軟な運動制御の基盤となっていると考えられる。これは、我々がまだ理解できていない重要な脳機能の一つであるが、本研究の結果はその脳機能の理解をさらに進展させるものである。
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Research Products
(6 results)