2008 Fiscal Year Annual Research Report
脳の性決定におけるエピジェネティックスの関与の解析
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20700292
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
松田 賢一 Kyoto Prefectural University of Medicine, 医学研究科, 講師 (40315932)
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Keywords | 性差 / 性行動 / 性分化 / ヒストン / エピジェネティクス / アンドロゲン / エストロゲン / アセチル化 |
Research Abstract |
脳の性差は精巣から一過的に分泌されるアンドロゲンの作用を受けるか否かで不可逆的に構築される。このときアンドロゲンは直接作用するのでなく、芳香化酵素によって代謝されたエストロゲンが神経細胞に作用して構造的性差を形成させる。エストロゲン受容体が機能するには転写共役因子のヒストンアセチル化酵素活性が必要であることから、研究代表者は、エストロゲンによってクロマチンのヒストンアセチル化状態の変化がひきおこされることが、脳の性の不可逆的決定の本体であると仮説をたてた。この仮説を立証するために、生後1日齢側雄ラット脳室中にヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるトリコスタチンAを注入した。成獣になってからの雄性性行動の観察を行ったところ、トリコスタチンA投与群で挿入率が抑制された。挿入率は、脳による勃起制御能を反映することから、トリコスタチンA投与によって脳の雄性化が阻害されたものと考えられる。以上より、ヒストンアセチル化の脳の性分化への関与の可能性が行動レベルで強く示唆された。さらに、雄性性行動に関与する内側視索前野を取り出し、性差構築に必要な遺伝子 (エストロゲン受容体、芳香化酵素およびカルビンディン) のプロモーターのアセチル化程度を、クロマチン免疫沈降法を用いて雌雄で比較したところ、胎生21日においで性差があり、生後3日までにこの差が更新されることがわかった。ラットの脳内において、実際に、性特異的にヒストンのアセチル化状態が変化することが分子レベルで示された。
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