2009 Fiscal Year Annual Research Report
脳の性決定におけるエピジェネティックスの関与の解析
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20700292
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
松田 賢一 Kyoto Prefectural University of Medicine, 医学研究科, 准教授 (40315932)
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Keywords | 性差 / 性行動 / 性分化 / ヒストン / エピジェネティクス / アンドロゲン / エストロゲン / アセチル化 |
Research Abstract |
脳の性差は精巣から一過的に分泌されるアンドロゲンの作用を受けるか否かで不可逆的に構築される。このときアンドロゲンは直接作用するのでなく、芳香化酵素によって代謝されたエストロゲンが神経細胞に作用して性差を形成させる。エストロゲン受容体が機能するには転写共役因子のヒストンアセチル化酵素活性が必要であることから、エストロゲンによってクロマチンのヒストンアセチル化状態の変化がひきおこされることが、脳の性の不可逆的決定の本体であると仮説をたてた。この仮説を立証するために、生後1日齢雄ラット脳室中にピストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤であるトリコスタチンA(TSA)を注入した。成獣になってからの雄性性行動の観察を行い、トリコスタチンA投与群で、昨年度解析した挿入率の抑制に加え、性行動、挿入、射精の潜時が増大することを明らかにした。TSA投与によって脳の雄性化が阻害されたものと考えられ、ヒストンアセチル化の脳の性分化への関与の可能性が行動レベルで強く示唆された。次に、どのHDACサブタイプが脳の性分化に関わっているかを明らかにするために、TSAの場合と同様の方法で、HDAC2および4それぞれのサブタイプのアンチセンスオリゴDNAを投与し、これら遺伝子の発現を抑制した場合の、性行動発現への影響を解析したところ、TSA投与の場合と同様に脳の雄性化の抑制が観察された(米国メリーランド大学との共同研究)。さらに、'雄性性行動に関与する内側視索前野を取り出し、性差構築に必要な遺伝子(エストロゲン受容体および芳香化酵素)のプロモーターへのHDAC2および4の結合量を、クロマチン免疫沈降法を用いて雌雄で比較したところ、生後1日に雄優位に結合していることが明らかになった。以上より、脳の性分化に関わるHDACとしてHDAC2と4を同定した。以上の成果を現在、学術論文として投稿中である。
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