2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20700294
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
高橋 弘雄 Nara Medical University, 医学部, 助教 (20390685)
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Keywords | 嗅細胞 / Pax6 |
Research Abstract |
発生期の特異的な神経回路網の形成は、脳の複雑な機能を支える基盤である。本研究は、特異的神経投射のモデル系である一次嗅覚神経回路の形成過程において、嗅上皮内の位置に応じた嗅細胞の分化や神経回路形成がどのように制御されているのか?という分子機構の解明を目的とした。特に、昨年度までの研究から、嗅上皮の腹外側に存在する一部の嗅細胞サブタイプで、分泌因子BMP7や転写因子Pax6が発生初期から成体に至るまで特異的に発現することを見出しており、その機能解析を中心に研究を行った。 嗅上皮の最も腹外側の領域には、大気中のCO 2を感知する特殊な嗅細胞サブタイプが存在するが、BMP7およびPax6はまさにこのCO 2感知細胞で特異的な発現を示した。そこで、レンチウイルスを用いてこれら遺伝子を通常の嗅細胞(BMP7やPax6は未発現)へ遺伝子導入し、その効果を検討した。BMP7の異所発現により、通常の嗅細胞特異的な遺伝子の抑制や、CO 2感知細胞特異的遺伝子の発現誘導などの顕著な効果は見られなかった。一方で、Pax6を通常の嗅細胞で異所発現させた場合、通常の嗅細胞で発現し、CO 2感知細胞では発現の見られないcAMPシグナル関連分子の発現が抑制された。しかしながら、Pax6の異所発現により、CO 2感知細胞特異的な遺伝子の発現誘導は見られなかった。これらの結果は、CO 2感知細胞の分化には、分化を促進させる正の制御因子と、通常の嗅細胞方向への分化を阻害する負の制御因子が関与しており、Pax6が後者として働いている可能性を強く示唆するものである。今後これら遺伝子の機能の詳細や、その下流で制御される因子の同定など解析を進めることにより、嗅上皮内の場所に応じた嗅細胞の分化を制御するメカニズムの全貌が明らかになるものと考える。
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