2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20700301
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山崎 匡 The Institute of Physical and Chemical Research, 戦略ユニット, 研究員 (40392162)
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Keywords | 小脳 / 運動学習 / 記憶転送 / 理論 / モデル / 解析 |
Research Abstract |
昨年度は、視機性眼球運動の適応時に、小脳皮質に形成された短期記憶が学習を繰り返すことによって小脳核へ転送され、長期記憶として固定化されることを、大規模計算機シミュレーションによって検証した。今年度は、記憶の転送を安定的に行うための、学習則における制約条件の役割を調べた。従来、苔状線維--前庭核間シナプスの学習則として単純ヘブが考えられてきたが、それではシナプス結合値が発散してしまうことがわかっていた。そこで、制約条件付きのヘブ則であるBienenstock-Cooper-Munro則(BCM則)ではどうなるかを考察した。具体的には、小脳Liquidstate machineモデルの数理モデルを構築し、視機性眼球運動の適応時における挙動を数学的に解析した。その結果、苔状線維--前庭核間シナプスの学習則が単純ヘブ則の場合はシナプス荷重値が発散することを解析的に示し、先行研究の主張を裏付けることにまず成功した。さらに、BCM則の場合は発散せず適切な値にとどまることを解析的に示すことも出来た。また、BCM則に含まれる制約条件が、生理学的には細胞内カルシウム濃度に対応することを主張し、この学習則が生理学的にも妥当であることを述べた。以上の結果を計算機シミュレーションによっても確認した。大規模計算機シミュレーションは大量のデータを生成するが、それを購入したハードディスクに保存することができた。成果発表を、日本神経回路学会全国大会と北米神経科学会の年会で行った。
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