2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20700301
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山崎 匡 独立行政法人理化学研究所, 戦略ユニット, 研究員 (40392162)
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Keywords | 小脳 / 運動学習 / 記憶の固定化 / モデル / ロボット制御 |
Research Abstract |
本年度の成果は以下の通りである。 まず、論文が採録になった。運動学習において、記憶はまず小脳皮質に短期的に形成され、学習を繰り返すことでその記憶が小脳核へと移動し長期的に固定化される現象を記憶転送と呼ぶ。記憶転送の実験パラダイムである視機性眼球運動のゲイン適応制御のメカニズムを、これまで研究してきた小脳のタイミング制御メカニズムと統一し、単一の計算原理で両制御を統合することに成功した。 次に、記憶転送における分散効果のメカニズムに関する理論構築を開始した。分散効果とは一回で集中的に学習するよりも適度な時間間隔で複数回に分けて学習した方がより長期記憶として残りやすいという現象である。分散効果の一つの解釈は、集中学習において転送されるのは学習前半の記憶のみであり、後半は長期記憶の形成が阻害され記憶されない、というものである。飽和は適度な時間間隔で解消されるとすれば、分散効果を説明できる。この機構はこれまでに提案してきた小脳核の学習則であるBienenstock-Cooper-Munro(BCM則のもとで自然に記述できる。BCM則の閾値が時間と共に上昇し学習を飽和させてしまうからである。その理論に基づいて予備的な計算機シミュレーションを行い、分散効果が再現できることを確認した。成果を小脳の国際会議で発表した。 また、記憶転送の計算機シミュレーションは時間がかかることから、長時間の計算機シミュレーションを現実的な時間で完了するためにGraphics Processing Unit(GPU)と呼ばれる特殊なハードウェア上にモデルを実装し、実時間で計算機シミュレーションが実行できるようにした。成果を国際学会・国内学会でそれぞれ発表した。さらに、そのモデルを用いてSmith Predictorと呼ばれる予測制御アルゴリズムを実装し、ロボット制御へ適用した。成果を国内学会で発表した。
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