2008 Fiscal Year Annual Research Report
スパイク時系列の再現性を利用した大脳皮質-皮質間局所回路構造の詳細な推定
Project/Area Number |
20700304
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
寺前 順之介 The Institute of Physical and Chemical Research, 脳回路機能理論研究チーム, 基礎科学特別研究員 (50384722)
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Keywords | 揺らぎ / 確率微分方程式 / 非線形振動子 / temoral coding / ネットワーク / 同期 / 位相 / ノイズ |
Research Abstract |
神経細胞はスパイクと呼ばれる短時間の電位変化を生成し互いに信号をやり取りする事で、高度な情報処理を行っているため、脳型情報処理の理解にはスパイク時系列がどれ程の時間精度を待って生成されるのかを明らかにする必要がある。これまで単一神経細胞が数ミリ秒程度の高い時間精度を待ってスパイク生成を行っているとの先行研究が報告されていたが、神経細胞は脳内で複雑なネットワークを作り、集団として働くため、脳内での情報処理に迫るには、単一神経細胞のスパイク精度ではなく神経細胞集団が生成するスパイク時間の精度を知る必要がある。これまでネットワークがスパイク生成時刻の変化にどの様に影響するのかは全く未解明の問題であった。本研究ではあるネットワークにおけるスパイク時刻精度の問題が、二つの全く同一のネットワーク間におけるスパイク発火の同期の問題に置き換えられる事に着目し、同期現象を取り扱う非線形動力学、及び、そこでの確率的な振る舞いを記述する確率微分方程式論を組み合わせる事でこの問題を解決した。我々は、この理論的なアプローチを用いる事で神経細胞同士を結ぶネットワークの結合強度と統計性に応じて、神経細胞集団が生成するスパイク時刻精度がどの様に変化するかを予言する理論式を導出した。本研究成果はPhysical Review Letters, 101, 248105 (2008)に発表された。情報処理の理解において、システムを構成する素子の精度を明らかにする事は不可欠の課題である。本研究結果は今後、神経細胞とそのネットワークによるスパイクを用いた情報表現の詳細を明らかにして上で基盤になるものであると期待できる。
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Research Products
(12 results)