2010 Fiscal Year Annual Research Report
スパイク時系列の再現性を利用した大脳皮質-皮質間局所回路構造の詳細な推定
Project/Area Number |
20700304
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
寺前 順之介 独立行政法人理化学研究所, 脳回路機能理論研究チーム, 副チームリーダー (50384722)
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Keywords | 理論神経科学 / 計算論的神経科学 / 確率過程 / 大脳皮質 / ノイズ / 揺らぎ / 非線形振動子 / ネットワーク |
Research Abstract |
認知、推定、情報の統合、行動の計画と調整など、我々の脳の高度な機能の多くは大脳皮質の神経細胞ネットワークによって実現されている。大脳皮質の機能やネットワーク構成には未知の点が多いが、大脳皮質の情報処理における特徴の重要な一つとして、神経活動に伴う揺らぎの大きさがあげられる。人工的なコンピュータが揺らぎ(ノイズ)を極力排除するのとは対極的に、脳は常に大きな揺らぎを伴って活動しており、むしろ揺らぎを積極的に利用している可能性が高い。この揺らぎの性質や起源を解明する事は、脳活動の再現性や多様性を理解し、脳型情報処理を解明するのに不可欠である。本年度の研究では、大脳皮質の神経細胞を含む広い非線形素子、特に非線形振動子について、ノイズ下での非線形ダイナミクスを記述する有効な方式を確立する事に成功した。非線形振動は振動タイミングを記述する位相変数で記述される事が知られているが、位相記述を一般的な揺らぎを伴う非線形振動子へどう拡張すればよいかは未解決の課題であった。本年度の研究によりその解明に成功し、一般的な揺らぎ下での非線形振動子の位相記述を与え出版した。さらに今年度は、神経系での揺らぎの起源とネットワーク構造の関連を解明する事にも成功し、大脳皮質で実験的に確認されている自発的なノイズ生成を説明するには、これまで提案されてきた神経回路モデルでは不十分である事を理論的に示し、大脳皮質で観測される神経ダイナミクスの多くを一括して説明できる新たな神経回路モデルを構築することに成功した。
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Research Products
(10 results)