2008 Fiscal Year Annual Research Report
既存回路網への統合様式の可視化による成体新生ニューロンの海馬情報との関連性の検討
Project/Area Number |
20700311
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
大川 宜昭 University of Toyama, 大学院・医学薬学研究部(医学), 助教 (80416651)
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Keywords | ニューロン新生(神経新生) / 新生ニューロン / 海馬歯状回 / スパイン / 長期増強(LTP) / レトロウイルス / 神経科学 |
Research Abstract |
成体海馬歯状回においてニューロン新生が起きており、これら新生ニューロンが歯状回の既存回路網へ機能的に統合されることが示されている。一方、新生ニューロンの既存回路網への統合様式が、記憶・学習等によりどのような影響を受けるのか、また、獲得情報に対しどのような影響を与えるかは不明である。私はレトロウイルス標識法を用いた新生ニューロンスパインの可視化と、シナプスレベルでの記憶学習のモデル現象である長期増強(LTP)誘導の両立を確立した。この技術を用い、海馬での情報獲得と新生ニューロンのシナプス形成様式との関連性を検討した。レトロウイルスは歯状回において神経前駆細胞にほぼ特異的に感染し、感染日を誕生日として同定できる。ウイルスでのGFP-β-actin標識により、新生ニューロンのスパイン発達を検討したところ、感染14日後(14dpi)~16dpiでスバイン形成が開始し、16~18dpiにかけて劇的にスパイン数が増加することが分かった。これを基に、スパインが未発現の12dpi、発現開始する16dpi、発達中・発達後の21dpiにそれぞれLTPを片側の歯状回分子層中層に誘導し、28dpiでのスパイン発現様式を観察した。12dpiでのLTP誘導により、誘導層特異的なスパイン数とスパイン断面積の増大が観察された。16dpiでのLTP誘導は、誘導層特異的なスパイン数の減少を引き起こした。また、21dpiでのLTP誘導により、反対側と比べ、誘導層である分子層中層におけるスパイン断面積の増大が観察された。これらの結果は、各条件3個体からの観察により再現性が確認され、海馬の情報獲得が、発達時期毎の新生ニューロンの既存回路網への統合様式に異なる影響を与えることを示しているとともに、また、発達時期毎の新生ニューロンが、獲得情報に対して異なる役割を果たすことを示唆している。
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Research Products
(2 results)