2010 Fiscal Year Annual Research Report
大脳皮質形成の神経細胞の移動と形態変化における膜輸送関連分子群の果たす役割
Project/Area Number |
20700317
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
川内 健史 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (60397544)
|
Keywords | 大脳皮質 / マウス / 神経細胞移動 / Dynamin / 神経発生 |
Research Abstract |
大脳皮質形成過程において、脳室帯で誕生した未成熟神経細胞が特定の位置まで移動することは大脳が正しく機能するために必須な発生段階であり、この異常はてんかんや精神遅滞を伴う重篤な脳疾患を引き起こすことが知られている。我々を含むいくつかのグループは、Cdk5が細胞骨格系の調節を介して神経細胞移動を制御していることを報告した。細胞骨格系の上流にある細胞膜受容体が適切に機能するためには、膜輸送系が正しく制御される必要があることから、本研究では、膜輸送系と細胞骨格系の連携に着目して研究を行った。昨年度までの研究により、簡便に個体への遺伝子導入を行える「子宮内エレクトロポレーション法」を用いて、膜輸送系の主要な経路であるエンドサイトーシス経路を制御するDynaminのドミナントネガティブ体(Dynamin-K44A)を移動神経細胞に導入すると、神経細胞移動が阻害されることを報告した。DynaminはCdk5の下流として機能することから、Dynaminが膜輸送系と細胞骨格系を連携している可能性が考えられる。しかし、Dynaminの機能抑制を行った脳では、遺伝子導入細胞の数が大きく減少していた。そこで、効果の弱いドミナントネガティブ体(Dynamin-delPRD)を用いて同様の実験を行ったところ、細胞数の減少を伴わず、神経細胞異動のみが障害された。よって、エンドサイトーシスの阻害による神経細胞移動の障害は、細胞死の2次的な影響ではないことが示唆された。以上の結果より、細胞骨格の制御に広く関わるCdk5の下流分子Dynaminを介したエンドサイトーシスが、神経細胞移動に必要であることが示唆され、Cdk5は下流分子を切り替えることにより、細胞骨格と膜輸送経路の双方を制御している可能性が示唆された。
|