Research Abstract |
多系統萎縮症(MSA)は, 非遺伝性の神経変性疾患の1つで, 発病から約10年以内に長期臥床状態になり, 死にいたる神経難病である. 病理学的特徴としては, 神経細胞の脱落とグリア細胞における異常封入体(GCI)の形成が見られる. GCI構成成分として, α-synuclein(以下, α-syn)というタンパク質が含まれ, 神経変性に関与することが指摘された. 今日, MSA発病機序は不明で, 機序の解明, 診断・治療法確立が望まれている. MSAモデルマウスは, 国立長寿医療センター矢澤らによって開発されたCNPasaのプロモーター制御下でヒトα-syn (SNCA)がオリゴデンドロサイト特異的に過剰発現するトランスジェニックマウスで, 神経細胞内でマウスα-syn (Snca)の不溶化が起こる. 申請者はこれまでにSncaの作用ターゲット分子としてβIII-tubulin (Tubb3)を同定した. 本研究では, MSA発症時におけるSncaのTubb3との結合部位を同定し, α-synの蓄積制御によるMSA治療法開発を目指す. 20年度は, Tubb3が構成する微小管の機能阻害剤の効果をモデルマウスの初代培養細胞系で検討し, 微小管阻害剤Nocodazole投与したところ, Sncaの神経細胞内での不溶化の抑制を明らかにし, Tubb3との結合が不溶化に関与することを間接的に示した. また, COS-7細胞系でのSncaとTubb3の共発現により, Sncaの不溶化を示した(American Journal of Pathology, 2009). 以上の結果から, Tubb3の部分欠失変異体を作成, COS-7タンパク質発現系を用い, 免疫沈降でTubb3のSnca結合部位の特定を進め, 21年度計画の特異的阻害剤作成に向けた結合部位配列の絞込みにつながる成果を得た.
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