2009 Fiscal Year Annual Research Report
糖鎖欠損マウスにおけるラフト構造破壊と膜局在神経再生分子群の機能制御メカニズム
Project/Area Number |
20700342
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
田島 織絵 Chubu University, 生命健康科学部, 准教授 (10362237)
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Keywords | スフィンゴ糖脂質 / ノックアウト / 神経変性 / ラフト / 中枢神経 / ガングリオシド / 神経再生分子 / Ninjurin2 |
Research Abstract |
ガングリオシドは脳神経系に高発現しているシアル酸含有スフィンゴ糖脂質であり,細胞膜ミクロドメイン(ラフト)上で種々のシグナル伝達調節に深く関与している.我々が解析を進めているGM2/GD2合成酵素遺伝子及びGD3合成酵素遺伝子ダブルノックアウト(DKO)マウスはGM3以外のガングリオシドを欠損しており,重篤な神経症状や神経再生/変性関連分子群の発現変化を認める.本研究では,ガングリオシド変異に伴って発現が変化する膜局在神経再生分子の生体内機能を解析すると共に,糖鎖変異マウスのラフト構成分子の挙動を明らかにし,中枢神経系機能調節におけるガングリシド糖鎖の役割を検討した. 1. DKOマウス中枢神経系において発現が低下する神経再生関連分子Ninjurin2の過剰発現培養細胞株を構築し機能解析を行なつた結果,Ninjurin2はラフトに局在し,細胞間接着や神経系細胞の突起伸長に関与することを明らかにした. 2. DKOマウスにおいて,神経再生関連分子Ecel1の発現は,小脳において特異的に増大しており,加齢に伴う組織変性の増悪化に比例してに顕著な発現亢進を示した. 3. DKOマウスの全脳由来細胞膜ラフトにおいて,ラフト常在分子の局在異常は確認されなかったが,刺激誘導性ラフト局在神経栄養因子受容体(TrkB)の挙動が野生型マウスと異なっていた.また,DKOマウスでは,著しい小脳の組織形態異常が認められ,ラフト常在分子の局在も変化していた. 以上の結果より,ラフト健常性の維持には適切なガングリオシド組成が必須であり,特に小脳においては,ラフトを介した神経機能調節シグナル伝達にガングリオシドが深く関与していることが示唆された.今後,個々のシグナル伝達機構におけるガングリオシド糖鎖の制御メカニズムを詳細に検討することで,神経変性疾患に対する治療応用の足がかりとなることが期待される.
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