2009 Fiscal Year Annual Research Report
イノシトール三リン酸受容体のチャネル開口機構の解明
Project/Area Number |
20700344
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
榎本 匡宏 The Institute of Physical and Chemical Research, 発生神経生物研究チーム, 基礎科学特別研究員 (50435632)
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Keywords | 神経化学 / イオンチャネル / 受容体 / 細胞内カルシウムシグナル |
Research Abstract |
本年度は、交付申請書の「研究実施計画」に記載した通り、イノシトール三リン酸受容体(IP_3受容体)の細胞質領域とチャネル領域の2つの領域間の相互作用がIP_3やCa^<2+>濃度に依存してどのように変化するのかをELISA法を用いて詳細に解析した。その結果、「IP_3受容体の細胞質領域とチャネル領域の直接的な相互作用がチャネル孔を閉じた状態に保つ」が、「IP_3及びCa^<2+>の結合によりチャネル孔が開く際に、この2つの領域間の結合強度に変化はない」ことを明らかにした。そこで、さらに、IP_3受容体のチャネル開口における領域間相互作用のより詳細な役割を解析するために、IP_3結合領域、制御領域、チャネル領域の3つの領域間に関して同様の解析を行った。その結果、「IP_3受容体の制御領域とチャネル領域の相互作用はチャネル孔を閉じた状態に保ち得るが、IP_3結合領域が存在しないとCa^<2+>のみでチャネルが開くこと」、「IP_3及びCa^<2+>の結合によりチャネル孔が開く際に、制御領域とチャネル領域の間の相互作用が乖離すること」が明らかになった。 以上の成果は、IP_3受容体のチャネル開口機構が領域間相互作用により制御されていることを世界で初めて直接的に証明したものである。さらに、Ca^<2+>結合のみでチャネルが開く構造を発見したことは、2つのリガンドの結合によって活性化する受容体の活性化機構の解明に重要な知見を与えることになり、受容体の構造生物学的な研究に及ぼす波及効果は非常に大きい。
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