2008 Fiscal Year Annual Research Report
うつ症状を呈するヒストン脱アセチル化酵素6遺伝子欠損マウスの行動薬理学的解析
Project/Area Number |
20700345
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Research Institution | Institute for Developmental Research, Aichi Human Service Center |
Principal Investigator |
深田 斉秀 Institute for Developmental Research, Aichi Human Service Center, 発生障害学部, 研究員 (80414019)
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Keywords | HDAC / アセチル化 / 情動 / 気分障害 / うつ |
Research Abstract |
本年度は、1、ヒト及びマウス脳組織におけるHDAC6発現様式の解析、2、Hdac6遺伝子欠損マウス(Hdac6KOマウス)の行動薬理学的解析、を実施した。1に関しては、さまざまな発生段階のマウス脳抽出液を用いて、抗HDAC6抗体によるウエスタンブロットを行い、HDAC6の発現ピークが胎生後期から生後2週間にあること、発現量は減少するものの成体まで発現が継続することを見出した。一方、マウス及びヒト脳組織切片を用いた免疫染色では、HDAC6が、背側縫線核、青班核、黒質のモノアミン作動性神経細胞に強く発現していること、特に背側縫線核にもっとも強く発現していることが判明した。 2に関しては、オープンフィールド試験、高架式十字迷路試験に加えて、新たにテールサスペンション試験を実施した。高架式十字迷路試験においては、Hdac6KOマウスは野生型マウスと比較して、不安に対する感受性が有意に低下しており、テールサスペンション試験においては、Hdac6KOマウスで抗うつ傾向(不動時間の減少)が観察された。またセロトニンとノルアドレナリンの神経伝達を促進するイミプラミン(抗うつ薬)の投与によってHdac6KOマウスの不動時間が野生型と同レベルまで減少したことから、Hdac6KOマウスでセロトニン、ノルアドレナリン神経伝達の異常亢進が推察された。 細胞質性の脱アセチル化酵素であるHDAC6が発生過程の脳でダイナミックな発現調節を受けていること、及び成体脳において特定の神経核に強く発現していることは、タンパク質の可逆的アセチル化調節の生理的役割を理解するうえで、学術的に重要な知見と考えられる。また、情動行動の発現に、モノアミン作動性神経細胞におけるタンパク質の可逆的アセチル化調節異常が影響を及ぼす事実は、新たな知見であり情動障害の病態理解に貢献すると考えられる。
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