2009 Fiscal Year Annual Research Report
うつ症状を呈するヒストン脱アセチル化酵素6遺伝子欠損マウスの行動薬理学的解析
Project/Area Number |
20700345
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Research Institution | Institute for Developmental Research, Aichi Human Service Center |
Principal Investigator |
深田 斉秀 Institute for Developmental Research, Aichi Human Service Center, 発生障害学部, 研究員 (80414019)
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Keywords | HDAC / 情動 / 気分障害 / うつ / アセチル |
Research Abstract |
Hdac6遺伝子欠損マウスが、行動テストにおいて、活動量の亢進、抗うつ傾向、不安レベルの低下を示すこと、HDAC6がヒト及び成体マウス脳において、背側縫線核、青斑核、黒質の神経細胞に強く発現していることが前年度までの解析によって判明している。本年度は、Hdac6KOマウスで異常の観察された行動テストの1つである尾懸垂試験を用いて、抗うつ薬、抗精神病薬が野生型マウスとHdac6KOマウスの行動に与える影響を比較検討し、用いた薬剤の作用機序との関係からHdac6KOマウスで異常の生じている脳領域、関与する神経伝達物質の同定を試みた。その結果、尾懸垂試験で観察されたHdac6KOマウスの行動異常、即ち不動時間の減少は、ドーパミンD2受容体シグナルを遮断することによって消失することが判明した。これは、Hdac6KOマウスでは過剰なドーパミン伝達が生じていることを示唆している。さらに、野生型及びHdac6KOマウス脳からドーパミンを多く含むシナプトソーム画分を抽出し、そこに含まれるタンパク質のアセチル化レベルを検討したところ、Hdac6KOで複数のタンパク質の顕著なアセチル化亢進が観察された。以上、Hdac6KOマウスの行動異常の原因は、ドーパミンシナプスにおける複数の分子のアセチル化亢進によって、ドーパミンD2受容体シグナルが過剰に活性化されているためと考えられる。本研究は、シナプスにおけるタンパク質の可逆的アセチル化調節がドーパミン神経伝達に関与すること、さらに情動行動の発現にも影響することを示しており、将来的には「シナプスにおけるタンパク質の可逆的アセチル化調節」が情動障害を伴う精神疾患の治療戦略の1つに発展することも期待される。
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