Research Abstract |
研究では,生体由来スキャフォールドを可逆的改質する方法を開発し,in vitroでの組織構築へと展開することを目的としている。本年度は,コラーゲンの側鎖のアミノ基を,ポリエチレングリコール(PEG)で可逆的に修飾することでコラーゲンゲル表面の細胞接着性の制御を行った。まず,昨年度開発した末端にスクシンイミジル基およびアルキニル基を有する光分解性リンカーと,PEGアジドとをClick化学により反応させ,光解離性PEGを合成した。次に,この分子をI型コラーゲンのゲルに作用させ,ゲル表面のPEG化を行った。つづいて,このゲルを波長365nmの光を照射し,ゲルに修飾したPEGを光解離させた。未処理のコラーゲンゲル,PEG化コラーゲンゲルおよびPEG化後に光照射を行ったコラーゲンゲルに対してHeLa細胞を播種し,細胞接着性を評価した。その結果,PEG化ゲルでは細胞接着が抑制され,またPEG化後に光照射を行ったゲルについては,未処理のコラーゲンとほぼ同程度の接着性を示すことを分かった。この結果は,HeLa細胞の接着性という指標においては,前記光解離性PEG化によるコラーゲンゲル表面の修飾が可逆的であることを示している。また,正立顕微鏡を用いたコラーゲンゲル表面のパターン化照射技術を確立した。現在,これら二つの技術を組み合わせ,コラーゲンゲル表面でのパターニングを進めており,これによりin vitro組織構築の道が拓かれると期待している。また,同様の化合物を用いて,光照射強度を調整することで定量的に表面改質し,表面化学勾配を形成することに成功した。
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