Research Abstract |
本研究では,人工的に作成した有声音の難発性吃音を含む非流暢発話のサンプルを,非吃音成人(男性30名,女性30名)に聞かせた。実験の条件は3つで,(1)難発性吃音が発症している長さ(200,300,400ms),(2)難発性吃音の発症頻度(5%,10%,15%),それから(3)難発性吃音が発症する位置(単語と単語の間,文と文の間,単語内)であった。実験参加者対し,(1)については全種類の長さを含む発話サンプルを聞かせ,(2)についてはそのうちの1つを聞かせた。各サンプルを聞き終えた後,実験参加者には,コンピュータプログラム化されたマグニチュードスケール(1=流暢,100=非流暢)によって各発話サンプルの流暢度を判定させた。この実験を(1)難発性吃音が単語と単語の間に発症する場合,(2)難発性吃音が文と文の間に発症する場合,(3)難発性吃音が単語内で発症する場合に分けて実施した。その結果,無声音の難発性吃音が発症する位置に関わらず,難発性吃音の長さが300ms以上の時,聞き手はその発話サンプルをより非流暢と判定することがわかった。ただし,難発性吃音が発症している長さに関わらず,平均得点の比較では,(3)難発性吃音が単語内で発症する場合,(1)難発性吃音が単語と単語の間に発症する場合,(2)難発性吃音が文と文の間に発症する場合の順に,聞き手は発話サンプルをより非流暢であると判定した。発症頻度,難発性吃音の長さ,それから聞き手の知覚変化の関係については,いずれの発症頻度においても300msと420ms間には聞き手の知覚に有意差は認められなかった。聞き手はすでに300msの時点でほぼ非流暢との判定をしていたためである。これは,前年度に実施した無声音の難発性吃音をサンプルとした実験研究とは異なる結果であった。
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