2009 Fiscal Year Annual Research Report
呼吸器におけるプロトン感受性イオンチャンネルの分布と発生
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20700429
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
菊池 真 Sapporo Medical University, 医学部, 助教 (20404585)
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Keywords | ASIC2 / 線毛 / 有毛細胞 / 呼吸器 / 発生 |
Research Abstract |
呼吸理学療法は患者の生活の質(Quality Of Life ; QOL)を向上させるために重要な手技である。社会的には、国会に理学療法士が患者の痰を吸引することが可能かどうかの質問(平成十六年十一月二十二日提出質問第四九号)が提出されるなど、その手技の重要性も認識されてきている。効率よく排痰がなされる理由の一つに、呼吸器に存在する線毛運動が挙げられる。線毛運動は培養細胞でも観察されることから、線毛細胞自体に外部環境を感知する受容器があると考えられている。今回、我々はproton-gated ion channelの1つであるAcid-Sensing Ion Channel 2(ASIC2)が呼吸器の線毛細胞の線毛に発現することを発見した(Kikuchi et al. 2008)。ASIC2は酸性域で電位を起こすことが報告されていることから、呼吸器線毛細胞におけるASIC2は病的な酸性環境を感知すると考えられた。同時に、卵管の線毛細胞の線毛、内耳や精巣上体の有毛細胞の細胞体にもASIC2が観察された(Kikuchi et al.2008)。さらに、ASIC2は外部環境の影響などにより後天的に発現するのか、あるいは先天的に発現しているかを、経時的に取り出したラット胎仔の鼻中隔を用いて観察した。結果、発生初期にみられる一次線毛にはASICI2の発現は観察されなかったが、胎生(E)17日のラット鼻中隔上皮において、ASIC2の発現が観察される線毛と観察されない線毛が観察された。ASIC2が発現しない線毛が観察されたことから、ASIC2は線毛を構成する構造タンパクではなく、何らかの機能を有する機能タンパクであることが予想された。E18日以降、ASIC2は観察したすべての線毛に発現がみられた。リアルタイムRT-PCRの結果、E21日の出生直前にASIC2のmRNAレベルが最高値を示した。これらのことから、ASIC2は線毛細胞に何らかの機能を与える機能タンパクであり、呼吸器線毛細胞の線毛に出生前から存在していることが明らかになった。ASIC2は酸性領域で興奮を引き起こすことから、呼吸器の線毛には、胎仔期より、気道内の酸性環境を感知する機能があることが示唆された。
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