2008 Fiscal Year Annual Research Report
半側空間無視に対するプリズム順応を用いた治療に関する検討
Project/Area Number |
20700432
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
太田 久晶 Sapporo Medical University, 医学部, 研究員 (70468106)
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Keywords | 半側空間無視 / プリズム順応 / 線分模写試験 |
Research Abstract |
1, 線分模写試験の作成と施行. この試験では6cmまたは, 12cmの水平な線分が見本として提示され, それと同じ長さの線分が用紙の左右の中央にくるように書き写すことが要求される。線分は用紙の正中より右または左へ1cmずれて印刷されていた. 男女各5名の健常者を対象にこの実験を行い, 見本とほぼ同じ長さの線分が用紙の左右の中心にくるように模写できることが明らかとなった. 次に, 2例の左半側空間無視患者に対して同試験を実施したところ, 1例で模写した線分は見本より短く, その位置は右へ偏倚し, 正常範囲を逸脱していた. つまりこの症例は, 自己を中心とした左無視と刺激を中心とした左無視の双方を呈していた. 以上のことより, 本試験により, 上記2つの半側空間無視のサブタイプについて症状の程度を同時にかつ定量的に評価可能であることが明らかとなった. 2, プリズム順応課題での刺激の数に関する検討. ポインティングに用いる刺激の数を2つと5つの2条件でプリズム順応の効果を検討した. 左へ偏倚するプリズム眼鏡を用いた際には, 刺激の数が5つよりも2つの方で順応効果が強く認められた. しかし, 右へ偏倚するプリズム眼鏡を用いた際には, 2つよりも5つの方で順応効果が強く認められ, 健常者に対するプリズム順応による影響は, 左右対称ではないことが明らかとなった. このことは, 左右の大脳半球が担う方向性注意機能の違いを反映している可能性を示唆しており, 左半側空間無視患者を対象としたプリズム順応課題で生じる方向性注意の変化を理解する上で重要な所見と考えられた.
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