Research Abstract |
本研究では,研究代表者が開発した包括的環境要因調査票(CEQ)を用いた環境的介入の効果を事前事後のQOL・ADL評価によって検討する.また,QOLに対して効果が認められた介入方法を環境要因別に集約し,在宅要支援・介護高齢者のQOLを高める包括的環境支援プログラムを開発することを研究目的とする.対象は,介護保険の居宅サービスを利用する在宅要支援・介護高齢者で,環境的支援が必要な者12名(平均年齢78.6歳)とした.これらの対象者に最大3か月間の環境的支援を提供し,QOL評価であるWHO/QOL-26と満足度100点法(LS-100),ADL評価(N-ADL)を介入前後で実施した. 結果として,CEQの実施により,対象者平均2.25(最小1,最大4)項目の環境要因に対して介入方針を決定し,環境的支援を提供した.最も多かった支援は,相互交流環境の「外出しやすい環境」に対するもので8名,以下,安心生活環境の「快適で使いやすい住居環境」に対して7名,同じ環境の「安全な住居環境」に対して5名と続いた.対象者のQOLとADLの変化について,介入前後のLS-100得点における符号検定でp<.05の有意な差が認められ,N-ADL得点では,符号検定でp<.01, Wilcoxonの順位和検定でp<.05の有意な差が認められたことから,CEQを用いた環境的介入の効果が示唆された. また,介入前後でWH0/QOL-26の平均QOL値が向上した者は9名,LS-100の得点が向上した者は8名であり,どちらも向上しなかった者は1名しかいなかった,したがって,QOLが向上した11名の介入方法を集約することで,8項目36種類の在宅要支援・介護高齢者のQOLを高める包括的環境支援プログラムが作成されたが,CEQに含まれる3因子14項目の環境要因全てを網羅することはできなかったため,今後のさらなる検討が必要とされた.
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