Research Abstract |
1) 慢性痛モデルラット骨格筋の組織学的検討 昨年度作成した不動化に伴う慢性痛モデルラットの骨格筋を組織学的に検証を行った。HE染色を施し光学顕微鏡にて検鏡した結果,不動によって痛覚閾値が低下した慢性痛モデルの骨格筋には,中心核線維(再生線維)および壊死線維(マクロファージが侵入した細胞)が多く認められた。そのため,痛覚過敏の原因として,筋線維の変性・壊死が関与している可能性があることが示唆された。 2) 慢性痛に対する理学療法手段の確立 予備実験において,慢性痛モデルに対する温熱刺激で,廃用性筋萎縮の進行と痛覚閾値低下を抑制する効果があることを実証した。今回の研究では,リハビリテーションでもよく用いられる伸張刺激(非伸縮性テープを用いた持続的伸張),運動刺激(トレッドミル走行)の効果について組織学的検討を行った。その結果,不活動に伴う廃用性筋萎縮は,伸張刺激,運動刺激を行うことでその程度を有意に抑制する結果となった。しかし,すでの述べた再生・壊死線維については,伸張・運動刺激によって,その発生を抑制することは出来なかった。伸張刺激群と運動刺激群を比較してみると,不動化に伴う関節可動域低下,痛覚閾値の低下,再生・壊死線維の発生について,伸張刺激群の方が有効であるという結果が認められ,さらに運動刺激群は痛覚閾値の低下については不動のみを行った不動群よりも悪化していることが分かった。そのため,不動化した骨格筋は,脆弱化するため,早期から強い運動負荷を行うことで,さらに痛覚過敏が悪化する可能性があることが示唆された。 これらのことから,長期臥床やギプス固定などを行った骨格筋に対しては,運動負荷量に留意し,まずはストレッチなどの伸張刺激から行うことが必要であることが推察された。 今後は,不動化と痛覚過敏の関連性,さらにはリハビリテーションの有効性についてさらに検討する必要があると考える。
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