Research Abstract |
現在の臨床現場において,脳卒中片麻痺患者の障害像の把握,問題点の特定,適切な治療方針の決定・実施,治療効果の判定は,医師や療法士の観察と経験に基づいた判断に頼るところが大きい.そこで,片麻痺患者の動作を定量的に評価し,治療計画や効果判定などを工学的に支援するために,モーションセンサを組み合わせたウェアラブル動作計測システムを開発し,片麻痺患者の歩行自立度評価への応用を試みたウェアラブル動作計測システムは,3軸加速度センサと3つの角速度センサを内蔵したモーションセンサユニット,送信機,バッテリ,および受信機を装備したPCで構成される.送信機と受信機はBluetooth ver.2.0+EDR Class1に対応しており,理論上は見通し距離でおよそ100mの通信が可能である.受信データはサンプリング周波数100HzでPCに記録されるとともにリアルタイム表示される.計測終了後,得られたデータからセンサユニットの角度を算出し,経時的な動作の情報を検者や被検者に提供することが可能である.本システムを用いて自立歩行が可能な片麻痺患者11名(自立群)と監視歩行の片麻痺者8名(監視群)を対象に歩行の計測を行った.今回実験では,センサユニットの装着部位を腰部と両大腿部とし,これらの部位の角度情報に着目して監視群に属する片麻痺者の歩行パターンの特徴抽出を試みた.特徴を捉えるパラメータとしては,体幹の傾き,歩行周期,大腿部の屈曲から伸展時間,パターンの再現性,両脚の対称性とした.その結果,監視群全員に共通する特徴は得られなかった.しかし,監視群に属する被験者8名中7名は,いずれかのパラメータが自立群の範囲から逸脱していた.個人ごとに監視となる要因が異なり1つのパラメータで判断することは困難であるが,本システムは情報を総合的に判断することで歩行自立度評価に有用であると示唆された.
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