Research Abstract |
本研究では,介護施設に入所する高齢者の自立移動に着目し,高齢者や関与に対する移動に関する意識調査および計測用電動車いすを用いた介入実験を行うことで,実生活に適応した移動支援機器の設計要件や利用環境への要件を明らかにすることを目的とした.平成21年度は次の3項目を実施した. (1) 計測用電動車いすの開発 簡易形電動車いすの操作履歴および走行軌跡(車両速度,走行軌跡,加速度)を取得可能な計測用電動車いすシステムを構築した.これを用いて若年者5名,高齢1名を対象とした計測実験を行った.計測実験は屋内走行スキルテストを基に最も基本的な前後進,回転,カーブ,停止走行,障害物回避走行データを記録した.その結果,屋内走行に必要な操作能力や操作特性を計測できることを確認した. (2) 評価ツールの検討 移動支援機器(手動車いすの自動ブレーキ装置)の介入評価の事例について,安全性を向上させた改良モデルを用いた追加実験と長期評価実験(合計9名)を行った.臨床評価と機器の機能評価の項目を含む短期評価のプロトコルを用いることで,個人特性に応じた機能的問題点を抽出することが可能であることが示された.また,長期評価からは導入効果と実生活に適応するための問題点が抽出できることを確認した. (3) 介護施設に適した移動支援機器の開発要件の明確化 (電動)車いす使用者15名,関与者41名(計10施設)を対象とした追加調査を実施した.まず,電動車いすに対する肯定・否定両論を分析し,自立移動のメリットと導入の阻害要因を抽出した.次に,メリットを維持し,阻害要因を解消する要求機能をまとめ,施設用として新たに必要な機能を抽出した.利用者の認知機能や姿勢保持機能および利用環境の必要条件と,自立移動に必要な要求機能に加え,基本機能や構造の改善や操作性,安全性に関する要求機能9項目を高齢者施設に適した電動車いすを開発するための要件とした.
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