Research Abstract |
本研究では, 正確な肢体運動制御に必要な心的なはたらきの一つであるBody Imageに注目し, 動的な環境との相互作用の中で人間が新たに認知-運動機能を獲得する過程の実験的解析とその工学的な応用を進めた. 具体的には, 肢体麻痺患者の書字訓練及び, 上肢関節の屈伸動作の訓練におけるBody Imageの補正を目的とする訓練装置の提案と, その有効性評価を行った. 特に, 今年度は以下に示すような, その実験環境となる装置開発と, 健常者および, 2名の片麻痺患者を対象とした評価実験に基づく新たな知見を得ることができた. ・上腕の関節角度を容易に計測できる運動計測専用の光ファイバセンサを, これまでに開発したプロトタイプの装置に組み込み, 実際の臨床実験を行うための実験環境の構築と, 健常者20名と実際の片麻痺患者2名を対象とした動作確認実験を行い, その即時的な訓練効果に関する評価を行った. ・その結果, 提案装置に実装されているフィードバック機能が, 使用者の装置への適応動作の時間発展を促し, Body Imageを補正する手助けとなることが明らかとなった. このことから, そのような適応動作により, Body Imageの改善がさらなるBody Imageの改善を促すような, 連鎖的な形式のBody Imageの改善メカニズムが構築されることが示された. ・さらに, 提案装置に実装されているフィードバック機能を改良し, その刺激を使用者の動きに対して動的に適応する機能や, 刺激を他者がインタラクティブに提示する機能を追加し, その訓練効率が有意に向上することを明らかにした. これらの知見から, 環境との相互作用を積極的に活用した訓練装置が, 肢体麻痺患者のリハビリ訓練におけるBody Imageの補正支援に有効であること及び, その効率的な補正メカニズムを明らかにした.
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