Research Abstract |
両手協調動作に大脳と小脳がどのように係わり,また,互いに連関するかの解明を目指し,ヒトを対象としたfMRI実験および,サルを対象とした小脳内ニューロン活動の記録を行った. ヒトを対象にした研究では,成人健常者10名に両手の協調動作(親指と人差し指によるタップのタイミングの位相を左右で90度ずらしたもの)を行ってもらい,その際の脳活動を記録した,動作中は円軌道を描く2つの光点がスクリーン上に示された.各光点は左右それぞれのタップに応じて円を描き,その始点を変えることで,課題動作が正しく行われると左右対称に円が描かれる条件と,90度の位相ずれをもって描かれる条件を設けた,すなわち被験者は同一の動作を行うが,動作の結果として示される視覚刺激が異なる環境下におかれた,その結果,左右対称に見えるとき補足運動野,右感覚運動野,右視覚野,左右小脳後部が強く活動し,90度ずれて見えるとき,両側背側運動前野,右感覚運動野,右島皮質,右腹側運動前野,右頭頂連合野が強く活動した.条件間比較では,感覚情報統合の座といわれる右島皮質が,90ずれのときに他方より強く活動した.これは,ずれて見えながら動作する場合に,より多くの感覚情報統合が必要であった可能性を示す.当初小脳に条件差がみられると予想し,実際に安静時と比較して小脳活動が顕著なのは左右対称条件のみだったが,条件間比較では差がなかったため,小脳の貢献はいずれの条件でも同等といえる.本実験をまとめた論文を作成中である. サルを対象にした研究では,右小脳核の広範囲より,課題動作遂行中のニューロン記録を行った.左右協調動作に関連する脳活動を検討する準備として,訓練済みの右手手首による8方向へのステップトラッキング中のニューロン活動を記録した.その結果,内側の核では運動遂行時に方向性が明確なニューロンが見られた一方で,外側では方向情報の有無にかかわらず運動準備の時点で活動変化がみられる高次運動関連活動が見られた.今後は,両手を協調させる際にこの高次運動関連領域がいかなる変化を見せるかが検討の対象となる.
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