Research Abstract |
本年度は, 体育教師の観察行動に求められるエクスパタイズを明らかにするために, 先行研究の収集, 検討を行った。その結果, これまでの研究では, 運動学習における観察に焦点が当てられ, 動きを改善するための観察にかかわるエクスパタイズについての考察が中心であることが明らかとなった。一方で, Schempp(2006)は, 観察行動が教師の教授能力の中でも重要であるとし, 熟練教員に特有の観察行動を実践を通して学ぶことの重要性を示唆した。これを受け, 教師経験や運動経験の違いに基づく, 観察の変化を明らかにする為に, 眼球測定運動装置を利用し, ボールゲーム中に「何」を見ていているかを明らかにした。その結果, 観察行動の4つのステージが見出され, これを論文にまとめた。 また, 平成17年度-19年度に研究開発した質的授業研究法を活用して継続的に授業分析をした結果から観察者の思考がどのように変化したか明らかにすることを試みた。これは, 継続して研究中であるが, おおよそ「教師の行動」から授業を語ることから, 「学習者の行動」から授業を語るように変化してきていることがわかる。このことは, 学習を「刺激-反応」という関係ではなく, 複雑なかかわりあいの世界として捉え, 授業改善に生かせることができるようになったと考えられる。 さらに, これまで開発してきた「メディアポートフォリオ」を教師の「観る」を支え, 教師の学びを成長させることができるツールとして還元できないかと考えた。これは, E-ポートフォリオという形でこれまで実践されてきた教師ポートフォリオでもその成果は明らかにされている。そこで, ネットワークを利用した協働性を保障する中でより効果的な利用ができるのではないかと仮説を立て, その検証に向けて取り組みを行っている。
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