2008 Fiscal Year Annual Research Report
「体ほぐし」の指導に資する心身一体観構築を企図したカリキュラム構成法の開発
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20700488
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Research Institution | Koriyama Women's Junior College |
Principal Investigator |
山口 裕貴 Koriyama Women's Junior College, 幼児教育学科, 講師 (50465811)
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Keywords | 体育科教育 / 「体ほぐし」 / 心身一体観 / 東洋思想的身体観 / 身体的自己への気づき / カリキュラム構成 / プラグマティズム |
Research Abstract |
当該年度は、東洋思想系(主として湯浅泰雄の「気」の理論、市川浩の「身」の概念)の文献調査によって、教員が、学習指導要領にある「心と体を一体としてとらえ」という文言の真意を認識し、「体ほぐし」のカリキュラム構成を行ううえで必須となる「心身一体」の観念理解を促す哲学的分析を遂行した。 湯浅の身体論にみる心身一如観においては、東洋の伝統的思想にみる「気」の存在とその役割を重視し、「気」の効力こそが心身一如を基底的に可能にすると捉えられていることを確認した。さらにはこの「気」を、教育学的立場から「コミュニケーション能力の育成」という観点によって探究することや、それをわれわれが実感し深く内省することの意義をも同時に理解した。 市川の理論分析では、理性的認識の集合体としての「気」(雰囲気)が、学習者個々の内部に、「今はこうすべきだ」「次はこれが必要になるな」といった能動的意思を起こさせ、これが一人ひとりの「身分け」(端的にいえば「自己の言動を周囲の雰囲気に合わせる」こと)、いわゆる、他者理解によって得られる適切な自己理解として波及していく原動力になることを押さえた。 また、アメリカのプラグマティズム(実用主義)にみる体育科のねらいと、東洋的身体論から派生させたそれとの質的相違点を抽出する意図から、アメリカを代表する体育教育学者シーデントップの著Sport Education : Quality PE Through Positive Sport Experiencesを分析し、「プレイ教育としての体育」に代わる「スポーツ教育」という理念の教育学的意味を検討した。 シーデントップのいう「スポーツ教育」は、スポーツそのものを捉える視野をあまりにも狭く設定してしまっており、スポーツは競争(勝敗)の要素以外に「自己目的的」な性質を有するもの、という観点を欠落させていることがうかがえた。このことから、アメリカ・プラグマティズムにみる体育観は、東洋思想にみる心身一体観の視座に乏しいことが裏付けられた。
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Research Products
(3 results)