2008 Fiscal Year Annual Research Report
障害者のスポーツ参加を通じた社会的統合化に関する研究
Project/Area Number |
20700494
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
奥田 睦子 Kanazawa University, 経済学経営学系, 准教授 (90320895)
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Keywords | 障害者 / 健常者 / 社会的統合 / スポーツ |
Research Abstract |
ドイツにおける、障害者の地域のスポーツクラブへの参加の実態やそのしくみ(社会保障制度との関連)を明かにするため、ドイツの障害者スポーツに関連する複数の機関を訪問して、資料の収集を行った。以下のことが明らかとなった。ドイツでは、障害や疾病を有する人が地域のクラブ等に参加する際に、医師からの運動に関する処方箋があれば医療保険の適用を受けられる制度がある(1回参加に対して5Cが保険対象としてクラブに支払われる。保険適用期間は、疾病や障害に応じて異なる)。この制度は、社会法典第IX編(リハビリテーションおよび障害者参加)および第V編(法定疾病者保険)に法的根拠を有している。行政区である州単位でその運用に若干の違いはあるが、経済的側面から見た場合、参加者自身および地域のクラブ等の両者にとって、参加し易く受け入れ易い体制になっている。また、医療的側面から見た場合にも、障害者が日常生活を営む上で、医療機関との繋がりは切り離せないものであり、受け入れるクラブにとっても医師からの処方箋は、障害者を安全に受け入れるために重要な役割を果たしている。このような障害者のスポーツ参加への医療保険の適用制度の歴史的背景には、第二次世界大戦における戦傷者保護があり、戦傷者の身体的機能回復の一貫としてスポーツが取り入れられたことに端を発する。その後、生活環境の変化の中で疾病や障害なども医療保険の対象になっていった。また、社会保障制が、国から恩恵的に受けるものではなく、社会連帯の重要な一部を成しているという思想基盤が見られた。本年度の研究では、障害者の地域のスポーツクラブへの参加に際し、社会保障制度とスポーツ制度とが一体化することの有効性が見出された一方で、歴史的背景が異なるドイツの制度がどこまで日本に適用可能性をもつのか、慎重に検討すべきであるとも認識も得た。
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