2011 Fiscal Year Annual Research Report
障害者のスポーツ参加を通じた社会的統合化に関する研究
Project/Area Number |
20700494
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
奥田 睦子 金沢大学, 経済学経営学系, 准教授 (90320895)
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Keywords | 障害者 / 健常者 / スポーツ / 統合化 / 社会制度 / 医療保険制度 |
Research Abstract |
主として以下の3つのテーマで研究を行い、研究成果を得た。 (1)「障害」の認識について、「自己-他者」の認識過程に着目し、「自己」と「他者」との認識の分化がどのように行われるのかを考察した。考察に際しては本研究が医療保険制度と関連していることから、医療保険制度や健康づくりへと視野を広げて検討した。その結果、障害の認識に関係の深い「正常-異常」の認識が、医療保険制度の維持や医療制度の国家管理化の文脈の中で恣意的になされる可能性があることが明らかとなった。(2)ドイツにおける医療保険制度を適用した地域スポーツクラブでの障害者のスポーツ参加が、障害者の社会的統合化にどのような可能性を持つものであるのかということについて、これまでの調査研究の結果および考察を踏まえて、ドイツの障害者スポーツ振興の実務担当者および研究者とディスカッションを行った。その結果、同制度が機能することで1970・80年代は社会的統合化の可能性を持ちえたが、近年では、市民型スポーツクラブ以外のスポーツ施設(民間フィットネスセンター等)でも行われる流れが見え始めていることから、医療保険制度を適用した地域スポーツクラブでの障害者の社会的統合化には、医療保険制の適用の根幹にある共助の思想や地域に根差したクラブライフが同時に求められるとの認識を共有した。(3)本研究の成果について、障害児及び障害者の体育・スポーツ等に関する科学的研究の発表の場であるアダプテツド・スポーツ学会および、スポーツの制度や政策を社会学的の見地から議論する日本スポーツ社会学会等で発表を行った。いずれの発表も、海外の事例の発表にとどまるものではなく、障害者スポーツ領域の研究では数少ない研究視点である歴史社会学的な分析を伴うものであり、歴史や社会背景の異なる日本での適応可能性を検討する上で意義深いものとなった。
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