Research Abstract |
本研究の目的は,受傷選手の心理的特性(楽観性)が,コーピングスキル,感情,痛み,そして手術実施後の心身の回復にどのように影響を及ぼしているか把握し,コーピング能力を効率的に高める心理トレーニングを構築することである。被験者は,前十字靱帯断裂の再建術を実施する予定であり,スポーツ整形外科医より活発な身体活動を行っていると判断された患者計68名であった。手術日の1日,もしくは2日前に心理的特性(楽観性,コーピンスキル),感情,痛みを測定し,手術実施後約13日目に再度67名の患者の感情,痛みを測定した。また受傷部位の筋力の回復度を測定するために,手術実施前と手術実施後6ヵ月目に,Cybexを用いて筋力の測定が行われた。これらのデータを分析した結果,手術前では,コーピングスキルの一つである肯定的解釈は,抑うつ,痛みと負の相関があり,活気,楽観性と正の相関がみられた。また,責任転嫁は疲労と正の相関があり,楽観性と負の相関を示した。そして,回避的思考は,手術実施後の抑うつと負の相関が報告された。また,手術実施前から手術実施後にかけて,否定的な感情に有意な減少が見られ,肯定的な感情に有意な上昇が見られた。さらに,手術実施後の痛みと緊張に正の相関が見られ,肯定的解釈は緊張,混乱と負の相関があった。現段階では,Cybexを用いた筋力のデータが取得できていない患者もいるため,心理的特性と回復度の関係についてはまだ分析されていない。来年度は,この結果を基に,受傷選手が適切なコーピングスキルを利用できるように,認知行動的な介入を行い,そのような介入が感情や痛みにどのような影響を与えるか調査をする予定である。
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