Research Abstract |
本研究の目的は, 低酸素暴露後の運動時における呼吸循環応答を明らかにすることである, 健常男性8名を被験者とした. すべての被験者は, まずリカンベント式の自転車エルゴメータを用いて最大酸素摂取量を測定された. 本実験は以下のプロトコールで実施した : 1)5分間の通常酸素ガス吸入による安静後, 低酸素ガスあるいは常酸素ガスのいずれかを20分間吸入した, 2)低酸素試行では吸気ガスを低酸素ガス発生装置より供給し, 動脈血酸素飽和度(SaO_2)が75-80%になるように吸気酸素濃度(FIO_2)を調節した(FIO_2=0.10-0.12), 3)低酸素ガス吸入後, 吸気ガスを常酸素に戻し, 10分間維持した, 4)その後, 常酸素下において, 40%および70%最高酸素摂取量強度の運動を自転車エルゴメータを用いてそれぞれ10分間実施した. 測定項目は, 換気量(VE), SaO_2, 心拍数(HR), 血圧(BP), 筋交感神経活動(MSNA)とした. MSNAは微小神経電図法を用いて肘窩部正中神経より記録した. 低酸素ガス吸入により, VE, HR, MSNA活動の有意な上昇が認められた. VEおよびHRは常酸素に戻した後に低酸素暴露前の値へ戻った. 一方, 低酸素暴露による増加したMSNA活動は常酸素環境でも持続が認められた. 運動によりVE, HR, BP, MSNA活動は増加したが, 事前の低酸素ガス吸入による影響は見られなかった, これらの結果から, 短時間の低酸素暴露が引き起す筋交感神経活動の過剰な亢進は, その後の運動時の呼吸循環応答および交感神経活動に影響しないことが示唆された.
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