Research Abstract |
高所・低酸素環境下での運動トレーニングは,アスリートの競技力向上の手段として広く用いられている.近年,簡易型の低酸素ガス発生装置が開発されたことにより,アスリートのみならず,一般健常人においても低酸素環境での運動やトレーニングが可能となっている.低酸素環境と運動との組み合わせは,生活習慣病の予防・改善に有効である可能性も考えられており,今後も低酸素環境の利用は増加すると思われる,しかしながら,低酸素環境における運動時の呼吸循環動態や調節メカニズムについては不明な点が多く,基礎データが不足している,そこで,本研究では,低酸素環境における呼吸循環応答を明らかにすることを目的とした.被験者は健康な男性とした.まず,常酸素(酸素濃度21%)および低酸素(酸素濃度12.7%)ガスを吸入しながら,リカンベント式の自転車エルゴメータを用いて,最大酸素摂取量を測定した.続いて,相対的運動強度が両環境で等しくなるように最大酸素摂取量の40%および60%強度を算出し,常酸素および低酸素環境において,それぞれ15分間の運動を実施し,呼吸循環応答を測定した.運動時の心拍数は両環境間で差は認められなかった.一方,低酸素環境下の運動時血圧は,常酸素環境に比較して低い傾向が見られた.微小神経電図法を用いた筋交感神経活動は,40%運動強度では,低酸素環境が常酸素環境より高く,70%強度では低酸素環境の方が低値である傾向が認められた.これらの結果から,運動時の血圧調節に動脈血酸素含量が影響する可能性が考えられる.
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