Research Abstract |
疲労は, 発熱, 痛みとともに, 身体のホメオスタシス(恒常性)の乱れを知らせる重要なアラーム信号であると考えられているが, 達成感や意欲といったポジティブな感情によりその程度は軽減する. しかしながら, 疲労とその他の情動の行動学的あるいは脳科学的研究は, 互いに接点が無いまま進められており, 両者の関連性は未だ明らかでない. そこで, 本研究では, 疲労と内発的意欲の関連性を, 内発的意欲の抗疲労効果という観点から, 非侵襲的脳機能計測により検証することを目的とする. 今年度, 疲労を誘発するパソコン作業負荷による主観的疲労度の増大およびパフォーマンスの低下や, 内発的意欲を賦活することが可能な刺激呈示による主観的疲労度の軽減およびパフォーマンスの維持・改善効果が, 再現性よくみられるタスクの設定, つまり, タスク前後の主観的疲労度や, タスク遂行中の反応時間や正答率といったパフォーマンスレベルで疲労・意欲を行動学的に評価可能なタスクの確立を試みた. タスクにはワーキングメモリタスクの一つである2-backtaskを用いた. その結果, 通常疲労負荷時には, 正答率が負荷時間経過に伴い低下し, 反応時間の変動係数が増加することが明らかとなった. 一方, 内発的意欲の喚起時には, 疲労負荷時間経過に伴う正答率の有意な低下, および反応時間の変動係数の増加は認められなかった. また, 課題前後の主観的疲労度を比較すると, 内発的意欲喚起時のほうが, 疲労度が軽減されていることがわかった. 以上より, 非侵襲的脳機能計測により内発的意欲の抗疲労効果を検証するためのタスクとしての有用性が示された.
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