Research Abstract |
疲労は,発熱,痛みとともに,身体のホメオスタシス(恒常性)の乱れを知らせる重要なアラーム信号であると考えられているが,達成感や意欲といったポジティブな感情によりその程度は軽減する.しかしながら,疲労とその他の情動の行動学的あるいは脳科学的研究は,互いに接点が無いまま進められており,両者の関連性は未だ明らかでない.そこで,本研究では,疲労と内発的意欲の関連性を,内発的意欲の抗疲労効果という観点から,非侵襲的脳機能計測により検証することを目的とする. 昨年度,疲労誘発タスクとして2-back task(ワーキングメモリタスク)が有用であり,負荷時間に伴いタスクの正答率が低下することを示した.また,内発的意欲喚起時には正答率の低下が抑制された.今年度はこれらの結果を踏まえ,fMRIを用いた非侵襲的脳機能計測実験に着手した.fMRI実験では,疲労誘発タスク遂行中の,(1)タスクに関連して賦活する脳領域,(2)疲労中枢と考えられる眼窩前頭野,および(3)意欲中枢と考えられる大脳基底核(特に,線条体)を関心領域とした脳神経活動の評価を行う.fMRIを用いた本実験の倫理委員会の承認が年度後半になったため,先ず疲労負荷をかけずに,(1)の2-back taskの神経基盤を検討した(倫理委員会承認済).2-back task遂行時には,両側の背外側前頭前野,前帯状回,頭頂連合野といった領域の賦活がみられた.先行研究において,慢性疲労と背外側前頭前野の過剰神経賦活との関連が報告されているが急性疲労との関連は明らかでない.2-back taskを疲労負荷タスクとして用いることにより,急性疲労時の背外側前頭前野の神経活動を評価可能となり,疲労中枢と考えられる眼窩前頭野および意欲中枢と考えられる大脳基底核を関心領域とした神経活動との関連解析が可能となった.
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