2008 Fiscal Year Annual Research Report
栄養感知システムを介した新たな肥満予防に対する分子基盤の解明
Project/Area Number |
20700555
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
新井 英一 University of Shizuoka, 食品栄養科学部, 准教授 (60325256)
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Keywords | キシリトール / 高脂肪食 / 内臓脂肪蓄積 / 褐色脂肪 / 熱産生 |
Research Abstract |
メタボリックシンドロームは、長期にわたる食生活の影響により生体での栄養素の恒常性が破綻することで発症し、心血管障害へと進展する。その治療や予防に対する食成分として、キシリトールが効果を有することをこれまでに見いだしているが、詳細なメカニズムは不明である。そこで、高脂肪食(HFD)摂取時におけるキシリトールの投与が、生体の脂質代謝および内臓脂肪の蓄積に対して如何なる影響を及ぼすか、また臓器間のネットワークの役割について検討した。肝臓において、キシリトール摂取群は脂肪酸燃焼系酵素の遺伝子発現を誘導する転写因子であるPPARα遺伝子およびその下流に存在するACO遺伝子の発現量を増強した。脂肪組織において、キシリトール投与群は、内臓脂肪の蓄積軽減および細胞の小型化を示した。さらに、肝臓での脂肪酸酸化のための基質の供給に寄与するHSL遺伝子の発現上昇、脂肪細胞の小型を誘導するPPARγ遺伝子およびアディポネクチン遺伝子の発現量が亢進していた。アディポネクチンは肝臓での脂肪酸酸化の亢進を誘導することが報告されていることから、その関与の可能性が考えられた。また、褐色脂肪細胞において、キシリトール投与群は熱産生に寄与する脱共役タンパクであるUCP1遺伝子およびミトコンドリアの生合成を調節するT-fam遺伝子の発現が亢進していた。したがって、キシリトールは、脂肪酸酸化、熱産生亢進を誘導し、肥満やメタボリックシンドロームの予防および治療に有用である可能性が示唆された。今後、詳細な作用機構を明らかにする目的で、キシリトールを受容する分子の存在有無および調節臓器などを明らかにする必要が考えられた。
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