Research Abstract |
乳児対面時に,声が高くなったり,抑揚をつけたり,ゆっくり話すといった特徴(Infant-directed speech(IDS))は,これまで,育児をしている養育者に出現することが報告されていた。中川・松村(2006)の研究では,乳児との接触経験がない大学生においてもIDSの特徴が出現することが明らかとなっている。しかし,いつからIDSの特徴が出現するのかは十分わかっていない。そこで,本研究では,乳児との接触経験がない小学生から高校生を対象に乳児への関わり方について検討を行い,IDSの発現時期を発達的視点から明らかにすることを目的とした。 平成22年度は,これまで行った小学生から高校生を対象とした研究成果をもとに,性差の比較,高校生と大学生の比較などの視点から対乳児音声・行動の発達について検討を行った。 行動パターンについては,小学生では,性差がみられること,高校生と大学生の行動レパートリーには違いがみられないことなどがわかった。言葉かけについては,小学生から高校生まで男女とも,乳児の名前を呼ぶ以外は,ほとんど出現しないことがわかった。音声については,年齢,性差を問わず基本周波数の上昇がみられ,IDSの特徴が出現することがわかった。声が高くなるという特徴は出現しやすい傾向にあることが示唆された。 また,女子大学生の乳児への関わり方が乳児との接触経験により違いがみられるかどうかについて検討を行った。その結果,乳児と接触経験をもっている女子大学生は,行動や発話,音声のレパートリーが多く,多様なあやし行動を身に付けていることがわかった(中川・松村,2010)。対乳児音声・行動は,乳児との接触経験により発達していく可能性があることが示唆された。
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