2011 Fiscal Year Annual Research Report
石窟壁画の劣化に影響を与える環境要素の予測と定量化に関する研究
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20700665
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Research Institution | Central Research Institute of Electric Power Industry |
Principal Investigator |
宇野 朋子 (財)電力中央研究所, システム技術研究所, 特別契約研究員 (90415620)
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Keywords | 文化財保存 / 壁画 / 石窟環境 / 光環境 / 気流環境 / 温湿度環境 / 保存修復 |
Research Abstract |
世界には、中国敦煌石窟をはじめ、彩色された壁画が残された石窟が多くある。それらは千年を超える長期にわたり自然環境にさらされてきたことで、褪色や変色などの劣化が生じている。本研究ではフィールド調査および数値解析によって、さまざまな環境要素が壁画の劣化に及ぼす影響について定量的に把握することを目的とした。 本年度は前年度に引き続き、敦煌石窟第285窟を対象として、屋外気象および石窟内温湿度や壁画の物性などのデータの収集・調査を行った。石窟内の光、気流、温湿度環境については、現地での実測調査を行うとともに、石窟内温湿度環境について熱水分同時移動解析による検討を行った。なお通年の石窟内温湿度および屋外気象要素については、敦煌研究院などからデータの提供をいただいた。 また、敦煌石窟とは環境が異なる高温多湿環境下にあり、彩色壁画を有するインドアジャンター石窟遺跡において、温湿度環境の解析を行い、外海気象が石窟内環境に与える壁体の影響について検討した。 光環境:敦煌石窟第285窟では現在は前室が整備されているため、石窟内にはほとんど太陽光が入らない。石窟内の照度は開口部を開けていても非常に低い。しかし、数値解析をもとに年間の日射量を算出したところ、前室のない状況では、西壁の1.5mよりも下部に直達と天空光が照射していたこと、直達のあたらない南北壁の西壁寄りでも天空光が照射していたこと、直達光にくらべ天空光の影響が大きいことが明らかとなった。気流環境:石窟内の気流性状の解析結果と現地での実測結果を比較検討した。石窟内外での温度差に対応して自然換気がなされていることの確認、およびその量について定量化した。温湿度環境:屋外の環境変化の影響と石窟内での人間活動による影響、石窟内の湿度上昇を引き起こす屋外環境の条件を整理した。それぞれの環境要素を検討した結果、とくに光環境の差異が壁画の褪色などの劣化に影響を与えている可能性が高いことを確認した。
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Research Products
(4 results)