2009 Fiscal Year Annual Research Report
方向感覚のトレーニング:地理的スケールでの空間的思考とその訓練可能性
Project/Area Number |
20700669
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石川 徹 The University of Tokyo, 大学院・情報学環, 准教授 (70436583)
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Keywords | 認知・行動地理学 / 空間認知 / 空間的思考 / 方向感覚 / トレーニング・教育 / 認知地図 / 空間能力 |
Research Abstract |
本研究は、大規模空間における空間的思考能力の問題について、効果的な教育・訓練の方法、および能力の向上性に焦点を当て、行動実験を通して実証的に分析をおこなうことを大きな目的とする。また、基礎的空間能力に関する理論的問題および地理学教育への応用可能性という視点も同時に持ちながら研究を進める。 本年度は、ルート情報の表現法が位置把握の程度に与える影響について、地図と写真の効果を比較する実証研究をおこなった。実験対象地としては、多くの人が位置把握に困難を感じるとされる地下鉄駅から地上への出口を取り上げた。実験の結果から、ルート上にわかりやすいランドマークがある場合には、写真で場所情報を提示することに一定の効果があることが示された。また、個人の空間能力(心的回転能力)との関係をみると、写真は空間能力の高低に関わらず場所把握を助ける効果が見られたが、地図は空間能力の低い被験者にとって実空間との関係付けが難しいことがわかった。とくに、地上で体の向きを変える必要がある出口ではその傾向が強かった。 昨年度おこなった、言葉を用いた空間情報の提示の研究と合わせて、場所情報の提示方法の違い(絶対参照系を用いるか相対参照系を用いるか、また、地図を用いるか写真を用いるか)によって、とくに空間能力・方向感覚の低い人には位置把握の程度に差が出ることがわかった。 これらの研究結果から、効果的なナビゲーション方法への示唆が得られたとともに、敢えて困難を感じる提示方法(東西南北などの絶対参照系および地図)を選択することで、利用者の位置把握の能力、ひいては空間的思考能力の訓練につながるのではないかという新しい視点も得られ、個人の属性を考慮した空間認知の問題として今後さらに研究を進めることが期待される。
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Research Products
(2 results)