2009 Fiscal Year Annual Research Report
植物の水利用様式からみた気候変化が小笠原諸島の固有植生に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
20700670
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
吉田 圭一郎 Yokohama National University, 教育人間科学部, 准教授 (60377083)
|
Keywords | 小笠原諸島 / 夏季乾燥期 / 固有植生 / 蒸散量 / 水文気候条件 / 水利用様式 / 生長期間 |
Research Abstract |
本研究の目的は小笠原諸島の乾性低木林において,特に植物の水利用様式に着目して,乾燥ストレスに対する構成種の生理的な応答プロセスを明らかにし,それに依拠して今後予想される乾燥化の影響を評価することである.本研究ではまず,父島気象観測所のデータを用いて,最近10年間の小笠原諸島の水文気候環境を明らかにした.その結果,2002年以降は乾燥する傾向にあり,特に乾燥した2004年は季節的な土壌水分量の著しい低下により,幹生長の抑制や葉の水ポテンシャルの低下などといった構成種の生理生態的な特性に強い影響を与えていた.こうした長期的な乾燥化にともなう土壌水分量の低下により,乾性低木林の構成種がどのような影響を受けるのかについて明らかにするため,構成種の水利用様式,特に乾性低木林の優占種であるシマイスノキ蒸散量に着目し,その季節変化と水文気候条件との関連性を検討した.その結果,乾燥ストレス下ではシマイスノキの蒸散量は大気飽差と対応せず,乾燥ストレスを受けていない期間に比べ少なくなっていた,すなわち,シマイスノキは水利用様式を変化させ,蒸散量を抑制することで,季節的な乾燥ストレスに耐えて生育していることが明らかとなった.また,土壌の水ポテンシャルが著しく低下する夏季乾燥期には,シマイスノキの幹生長が終了し,シマイスノキの生長期間が短縮されていた.以上のことから,今後乾燥化がさらに進行した場合,水文気候条件に応答した構成種の水利用様式の変化や生育期間の短縮を通じて,構成樹種の生長量の低下やさらには植生構造の変化などが生じ,小笠原諸島の固有植生は気候変化の影響を受けることが予想された.
|
Research Products
(2 results)